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ジャンプをめぐる意識の変遷

2007年08月31日 18:51
ジャンプをめぐる意識の変遷

[編集] 3連続ジャンプと後半のジャンプの基礎点1.1倍

現在の採点システムではプログラムの後半のジャンプには基礎点の1.1倍が加点されるシステムになっている。そのため、かつては余り見られなかった 3連続コンビネーションジャンプを演技後半に行うことが顕著となっている。これは演技後半であれば、コンビネーションジャンプの3番目のジャンプが2回転であっても、基礎点が1.1倍されるため、わずかではあるが点数を多く獲ることが出来るからである。

採点システム変更後初のオリンピックであるトリノオリンピックではエフゲニー・プルシェンコとステファン・ランビエールが演技冒頭に4回転-3回転-2回転のコンビネーションジャンプを試み成功させた。しかし、例えば

* 演技前半に『4回転トウループ - 3回転トウループ - 2回転ループ コンビネーション』を行い、演技後半に『3回転フリップ - 2回転トウループ コンビネーション』を行う
* 演技前半に『4回転トウループ - 3回転トウループ コンビネーション』を行い、演技後半に『3回転フリップ - 2回転トウループ - 2回転ループ コンビネーション』を行う

上記2つの場合を比較すると、前者のほうが難度は高いにもかかわらず、ルール上、後者の方が多く点を稼げるため、あえて4-3-2コンビネーションやさらに難度の高い4-3-3コンビネーションに挑戦する必要がなくなり、4回転からの3連続ジャンプはあまり見られなくなった。代わって3-2-2コンビネーションジャンプを採用する男子選手が増える傾向にある。

[編集] 4回転に対する意識の変遷(男子シングル)

現在の採点システムでは旧採点方法に比べて4回転の価値がさほど高くない。旧採点方法の頃は4回転を成功させることが勝敗を大きく左右した。そのはしりとなったのが現役時代のエルビス・ストイコであり、やがて『空中戦』といわれる時代が到来し、ショートプログラム、フリープログラムの両方で4回転を跳ばなければ勝負にならないとまで言われた。事実 2002年前後は4回転時代と呼ばれたほどに、多くの選手が4回転、そして4回転からのコンビネーションジャンプをプログラムに取り入れていた。

また、現在のように、プログラム後半に跳ぶジャンプを明確に高く評価するシステムがなかったこともあり、必然的に、体力的に余裕のあるプログラムの前半に、4回転ジャンプなどの難度の高いジャンプを集める傾向が極めて顕著にみられた(例えばアレクセイ・ヤグディンやエフゲニー・プルシェンコはプログラムの前半に4回転を1回あるいは2回跳び、次に3回転アクセルを2回決め勝敗の大勢を決してしまった)。

しかし、現在の採点システムにおいてジャンプの基礎点は(後半は1.1倍になる)

* 3回転アクセル:7.5
* 4回転トウループ:9.0
* 4回転サルコウ:9.5

となっており、3回転アクセルと4回転トウループの点差はわずか1.5点しかない。

また、ジャンプの質の良し悪しに応じてつけられるGOE(加点減点)というものがあるが、2回転アクセルが「3.0~-2.1」の幅でつけられるのに対し、3回転ジャンプ以上の場合は「3.0~-3.0」の間でつけられる。総じて、2回転アクセルとそれ以上の難易度のジャンプを比較した場合、難しいはずの後者のほうが加点幅は変わらないのに減点幅だけが大きくなるという状況になっている。

さらに、上述したジャンプの場合にあるように、4回転ジャンプに挑んでも回転不足で3回転と判定されてしまうと点数は5点以上落ち、ザヤックルールへの配慮も必要となるため、4回転はハイリスクローリターンなものとなっている。

以上の点により、新採点システムの施行以降、プログラムに4回転ジャンプを組んで失敗するよりも安全に3回転ジャンプと2回転アクセルのみで構成し、確実性、完成度の高さで勝負する選手も多くなった。練習では4回転ジャンプを飛べていても戦術上、あえて試合で挑戦しない場合も多々ある。コーチ・振付師・選手ともジャンプのみに頼るのでなくスケート全体の良質な構成を考える傾向になり、スピンやステップにも余念の無い演技を志向するようになった。

その後、選手やスタッフが採点システムの仕組みを熟知し、スピン、ステップのレベル獲得の研究、対応が進んだ結果、2006年世界選手権を皮切りに、男子選手の4回転への挑戦回数が増加傾向にある。これは上位の選手がスピン、ステップのレベルを獲得し、4回転まで成功させると、いくら4回転の評価が低いとはいえ、それに次ぐ選手達たちも4回転を成功させなければ逆転のしようがないからである。特に、2006年ロシア杯においてフランスのブライアン・ジュベールが1つのフリースケーティングで3度の4回転を成功させた(これは上記の4回転時代ですらティモシー・ゲーブル、張民、本田武史のわずか3人しかなし得なかったことである)ことをうけ、男子シングルは再び4回転時代に突入すると予想する声もある。

それに加えて、4回転がハイリスクローリターンというのは、4回転を安定して決められる選手がいないことが前提となっている。このため、ジュベールのように4回転を安定的に、しかも複数回決めることのできる選手がいる場合には、むしろそのような選手に勝利する条件として4回転の成功が必須になってくる。

同じことが女子におけるトリプルアクセルについてもいえる。これは女子にとっては非常に難度の高いジャンプであるため、無理に挑戦して失敗し4回転の場合のような不利益を被るよりは、質の高いダブルアクセルを決め、スピンなどの要素で加点をねらった方がよいということになる。しかし浅田真央のように質の高いトリプルアクセルを跳ぶことができ、またスピンなどでも高い評価を得る選手がいる場合には、他の選手もリスクをおかしてトリプルアクセルに挑戦する必要が出てくる。特に浅田の場合には跳ぶ前にステップを組み入れることにより難易度を高めて高評価をねらっており、加えてこのジャンプを2回取り入れた実績もあるため、特に上のことがあてはまる。現に浅田自身もこれからはトリプルアクセルを跳ぶ選手が出てくると発言し、ジュニアの選手の中にも長洲未来(米)や西野友毬(日)のようにこの技の習得を考えている選手は少なくない。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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